帰国前夜のカミングアウト(旅行会社を選んだ理由)

 

シエナでの最後の食事にブタメンを選んだというのも相当なカミングアウトだと思うが、それとは別の告白がもうひとつある。

 

旅行会社をインターン先に選んだ理由、それは、「旅行」以外の単語が思い出せなかったから。

 

担任の先生に業界の希望を聞かれたとき、興味のあった他のいくつかの業界のイタリア語が、信じられないことにぱっと口から出て来なかったのだ。

「えっと、、、、、、、、、旅行会社、、、とか?」と、第5志望ぐらいだった業界の名前をこぼしてしまったのがきっかけだった。

 

分かっていはいたが、文字にしてみるとなんと情けないことか。

 

さらにその後、私はこう付け加えた。

「私のイタリア語レベルで仕事になるとは到底思えないので、掃除とかお茶汲みとかコピー取りさせて頂ければありがたいです。イタリアの会社の雰囲気だけ知れればいいんです、どうせ2週間だし、何もできませんから、、、」

 

大学の同級生たちが経たようなものとは似ても似つかぬ、やる気と情熱と意志が皆無の状態で始まった私のインターンだった。

 

私が働かせてもらっていたVACANZE SENESIでの仕事は、実際にはお茶汲みやコピーとりとはかけ離れたものだった。

 

・日本の旅行会社のデータベース作成

  …約400社のホームページをひとつひとつ見て、適切な会社を50社ほどピックアップ。メールアドレスやそこの業務内容をエクセルにまとめる。

・取り扱う旅行の種類やその傾向を分析

・日本人向けイタリア旅行の企画

  …王道ツアー1本、グルメツアー1本、サッカー観戦ツアー1本、ラグジュアリーツアー1本、ハネムーン3本

・企画書和訳

  …私が去ったあとも上司や他の国の顧客が読めるように企画書は英語で書いていたため。

・リストアップした約50社に企画の提案メールを送る

・会社案内和訳

・日本向け広告ハガキ作成、キャッチコピー作成

 

 

思い起こせばわずか2週間でいろんなことを経験させてもらった。

家に帰ってからも宿題のように毎日作業を持ち帰っていたが、それ自体が楽しくて楽しくて仕方がなかった。

イタリア語もおぼつかない、こんなに顔の丸い(関係ないか)日本人の学生を信じて仕事を任せてくれた上司のみなさんにいまでは感謝せずにはいられない。ビギナーズラックとしか思えないが、約50社にメールをして、5社から前向きな返信をもらい、内1社とは既に帰国後の商談の日程が決まり、別の1社からはその会社のホームページに私の企画した旅行プランを掲載をしていただけることになった。

 

 

思わぬ小さなできごとが振り返ればのちの人生を左右していた、みたいなことがひとの一生にはままあるらしい。

 

 

私の場合、あのとき「旅行会社、、、?」と口走ってしまったことがそれにあたるのではないかと今では思う。

浮かれていることは重々承知のうえだし、盲目的ですらあるというのは自覚している。

 

私が日本に帰国してからはインターン生という肩書きが外れ、

作って頂いた名刺には "日本窓口 Sales Representative"という文字が加わった。

 

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正式な社員ではないが、学生社員として雇ってもらうという形だ。

 

帰国してから就活せずにそのままVACANZE SENESIに正式に雇ってもらうことも考えたが、

家族や友人に相談した結果、これまでの予定通り日本での就活は行うことにした。

希望としてはやはり、今となっては第1志望になった旅行業。

 

さっさと日本でお仕事決めて、会社のお金でじゃんじゃんイタリアに戻る。

愛しくてたまらないこの国と、この国で出会った人々のもとに戻る。

 

7ヶ月3週間の学校生活と2週間のインターンで、そう誓わずにはいられない経験がたくさんできた。

 

ドイツ人との喧嘩も、神父にぶつけた疑問も、帰りたくないという忍び泣きも、

いつの日か思い返して微笑むことができますように。

 

ということで『若気のイタリ〜 シエナ偏』これにて終了。

めでたしめでたし、と締めくくってもいいかね?